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TukeyのHSD検定

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TukeyのHSD検定とは?¶

TukeyのHSD(Honestly Significant Difference)検定は、複数の平均値を比較する際に用いる事後検定の一つで、各グループ間のペアごとの比較に対して、すべてのペアを同時に検定しながら、第一種の過誤率を制御する方法です。
ANOVA(分散分析)を実施した後、グループ間に有意差がある場合に、どのグループ間で具体的に差があるのかを調べるために使用されます。

TukeyのHSD検定は、同時に行う多重比較に対して非常に強力な検定であり、複数の平均値を比較する際に一貫した有意水準を維持しながら、特定のペア間で有意差を見つけることができます。


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TukeyのHSD検定が適用される場面¶

TukeyのHSD検定は、通常、一元配置分散分析(ANOVA)の後に行われます。
ANOVAが有意である場合(すなわち、少なくとも1つのグループ間で平均値に差があることがわかった場合)、次に知りたいのは、どのグループ間で具体的に差があるのかです。
ここでTukeyのHSD検定が役立ちます。

この検定は、群間の全てのペアに対して、どのペアの平均値が有意に異なるのかを明らかにします。
例えば、3つ以上の異なる処置や薬剤の効果を比較する際に、どの2つの処置や薬剤が有意な差を示しているのかを知るために用いられます。


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検定の方法¶

TukeyのHSD検定では、グループ間の平均値の差を検定するために、次の統計量を計算します。

$$
q = \frac{\overline{X_i} – \overline{X_j}}{\sqrt{\frac{MS_{within}}{n}}}
$$

ここで、

  • $ \overline{X_i} $ と $ \overline{X_j} $ は、グループ $ i $ と $ j $ の平均値です。
  • $ MS_{within} $ は、ANOVAでの群内分散(残差の平均平方)です。
  • $ n $ は各グループのサンプルサイズです。

Tukeyの検定では、この $ q $ 値をTukeyの分布に基づく臨界値と比較します。
臨界値は、比較するグループ数自由度(群内自由度)に依存します。
この値を超える場合、そのペアの平均値の差は統計的に有意と判断されます。

HSD(Honestly Significant Difference)の計算式¶

実際のHSDは、次のように計算されます:

$$
HSD = q_{\alpha} \cdot \sqrt{\frac{MS_{within}}{n}}
$$

ここで、

  • $ q_{\alpha} $ は、選択した有意水準(通常は5%)でのTukey分布に基づく臨界値です。
  • $ MS_{within} $ はANOVAの群内分散で、誤差項から計算されます。
  • $ n $ は各グループのサンプルサイズです。

このHSDの値を使って、各ペアの平均値の差を検討し、平均値の差がHSD以上であれば、そのペアの差は統計的に有意であると判断します。


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具体例¶

例えば、3つの異なる肥料を使った植物の成長データを考えます。
それぞれの肥料を使ったグループA, B, Cで、植物の成長の平均値に差があるかどうかをANOVAで検定した結果、有意な差があることがわかったとしましょう。

次に、TukeyのHSD検定を使って、具体的にどのグループ間に有意な差があるのかを調べます。

  • グループA vs グループB:有意差がある
  • グループA vs グループC:有意差がない
  • グループB vs グループC:有意差がある

このようにして、どの肥料が植物の成長に大きな影響を与えているかを具体的に把握できます。


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TukeyのHSD検定の利点と制約¶

利点:¶

  1. 第1種の誤りを制御:TukeyのHSD検定は、複数の比較を同時に行っても全体の第1種の誤り率(false positive rate)を制御できる。
  2. 多重比較に適した強力な検定:Bonferroni法などに比べて、比較的パワーが高く、複数のグループ間での真の有意差を見つけやすい。

制約:¶

  1. 分散の等質性が前提:TukeyのHSD検定は、すべてのグループの分散が等しい(分散の等質性)という仮定の下で行われる。
    そのため、分散が等しくない場合には、他の検定(たとえばGames-Howell検定)を検討する必要がある。
  2. サンプルサイズが等しくない場合:TukeyのHSDは各グループのサンプルサイズが同じであることが理想的ですが、等しくない場合も適用は可能。
    ただし、その場合は少し注意が必要です。

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まとめ¶

TukeyのHSD検定は、ANOVAの結果、複数のグループ間で平均値に有意差が認められた際に、どのグループ間で有意な差があるかを特定するための強力な事後検定です。
この方法は、グループ間の全ペアを同時に検定しながら、第一種の過誤率を制御するため、複数の比較が必要な実験や調査において非常に有効です。

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