Bonferroni補正とは?¶
Bonferroni補正(ボンフェローニ補正)は、複数の統計的検定を行う際に、第1種の誤り(偽陽性、つまり「差がないのに差があると判断する誤り」)のリスクを抑えるために使用される補正方法です。
特に、多重比較を行う場合に有効です。
通常、統計的検定を複数回行うと、誤って有意差があると判断してしまう確率が上がります。
Bonferroni補正は、このリスクを制御するために、各検定での有意水準を調整する方法です。
Bonferroni補正の目的¶
Bonferroni補正の基本的な考え方は、全体の有意水準をαとしたとき、それを行う検定の数(m)で割って、個々の検定に対する有意水準を小さくすることです。
これにより、誤って有意な結果を得る確率(第1種の誤り)を全体としてコントロールできます。
Bonferroni補正の式:¶
$$
\alpha_{修正} = \frac{\alpha}{m}
$$
ここで、
- α は全体の有意水準(通常0.05や0.01など)、
- m は行う検定の数です。
つまり、たとえば全体の有意水準を0.05に設定し、5つの異なる検定を行う場合、各検定での有意水準は $\frac{0.05}{5} = 0.01$ となります。
具体例:3つのダイエット法の多重比較¶
例の設定¶
再び、3つの異なるダイエット法(グループA、B、C)で被験者の体重減少量を比較する研究を行ったとしましょう。
- グループA:従来のダイエット法
- グループB:新しいダイエット法1
- グループC:新しいダイエット法2
3つのグループ間で、体重減少量に有意な差があるかどうかを検定します。
通常、このような比較では複数のペアで比較することになります。
ペアの比較:¶
- AとBを比較
- AとCを比較
- BとCを比較
ここでは、3つの比較(ペアごとの検定)を行います。
Bonferroni補正を適用¶
全体の有意水準を0.05とした場合、3つの比較を行うので、Bonferroni補正後の各検定に対する有意水準は次のようになります。
$$
\alpha_{修正} = \frac{0.05}{3} ≈ 0.0167
$$
つまり、個々の比較においてp値が0.0167未満であれば有意差があると判断します。
Bonferroni補正の利点と注意点¶
利点:¶
- 第1種の誤りを抑える:複数の検定を行う際に、誤って有意な結果を得るリスク(偽陽性率)を効果的に抑えることができます。
- 単純で計算が容易:複雑な統計的な手法を用いずに、簡単に有意水準を調整できる点も魅力です。
注意点:¶
- 保守的すぎることがある:Bonferroni補正は非常に保守的な方法で、個々の検定での有意水準が大きく低くなるため、第2種の誤り(偽陰性、差があるのに差がないと判断する誤り)が増える可能性があります。そのため、真に有意な結果を見逃すことがあるかもしれません。
- 検定の数が多いと効果が減少:mが大きくなるほど有意水準が小さくなりすぎてしまい、どの比較でも有意差を検出できなくなるリスクがあります。
まとめ¶
Bonferroni補正は、多重比較を行う際に有意水準を調整して、第1種の誤りを防ぐためのシンプルかつ強力な方法です。
ただし、保守的すぎる側面もあるため、特に検定の数が増える場合には、他の方法(たとえば、TukeyのHSD検定やHolm法などの代替手法)も検討する必要があります。
Bonferroni補正は、複数の仮説検定を行う研究での標準的な方法として広く使われていますが、適切な手法を選ぶためには、研究の性質や目的に応じた調整が求められます。
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